処刑直前の姫に転生したみたいですが、料理家だったのでスローライフしながら国民の胃袋を掴んでいこうと思います。
学校の給食みたいに、城のみんなは器を持ってずらりとならんだ。麺を入れる人とスープをよそう人に別れ、次々と食事を配ってゆく。


「ママーまだ食べちゃだめ?」


先に受け取って席についている子供は、よだれをたらしながらジャガイモラーメンを見つめた。
スープの香りが食欲をそそる。


「もう少しだけ待っててね」


そういうお母さんも、ゴクリと喉をならす。


「おかわりはありますので、たくさん食べてくださいね」


わたしはどんどん配った。
みんなは不思議そうに器の中を眺める。ああ、早く食べた時のみんなの表情を見たい。感想を聞きたい。
今まで一人で作って一人で食べていたから、そんな風に感じるのは初めてだった。

一口目を食べた時を想像して、ワクワクとする。


警備隊のみんなも受け取り、最後に料理係の人たちもそれぞれ自分の分を取り分けると、わたしも自分の食べる分を貰い料理長に号令をお願いした。


「さぁ準備はできた。食事にしよう。みんな食べてくれ」


料理長は少し緊張気味に言った。

おのおのいただきますと呟くと、麺を持ち上げてみたり、スープを一口だけ飲んで不思議そうな顔をしていた。周りを見回して様子を見てから慎重に食べる人もいた。

警備隊は外で訓練をしてきてよほどお腹が空いていたのか、がっつくように食らいつく人が多かった。


「なんだこれ、うめぇ!」


次々と美味しいという声が聞こえてきて、わたしはほっと胸をなで下ろした。
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