処刑直前の姫に転生したみたいですが、料理家だったのでスローライフしながら国民の胃袋を掴んでいこうと思います。
「フェン!」

さすがに俺は怒った。

これはゆづかだけでなく、手伝った料理係達をも悲しませる行為であった。
ゆづかは料理が落ちた床を見て俯いた。肩からさらりと金髪が落ちる。拳が震えている。

「ゆづ……」

「ーーーーひどい」

彼女に駆け寄ろうと一歩を踏み出した時、ゆづかがきっと顔を上げ、俺は動きを止めた。


「わたしに怒るのは仕方ないけど、料理に当たるってのは違うんじゃないの?! これは、わたしだけじゃなくて、みんなが協力してくれて出来上がった食事なのよ?」

「はっ! 何様だ。リアにそれが言えた立場か」

「そうかもしれないけれど、でも今は……」

「うるせぇよ! お前と議論なんかするつもりはないね! リアの処遇には反対だ。俺は許さないぞ!」

フェンは俺のことも睨むと、椅子を蹴り倒すと食堂を出て行ってしまった。


「あ、フェンさん!」


直属の部下達が数人追って行く。ゆづかは悲しそうにそれを見送った。
フェンもそうだが、早めに不満を抱える者たちのケアをしないと、国が分裂しそうだった。

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