処刑直前の姫に転生したみたいですが、料理家だったのでスローライフしながら国民の胃袋を掴んでいこうと思います。

「ーーーー妹さんを?」

「はっ。それも忘れているっていうのか。妹は生まれつきの病気で髪が抜けるんだ。それをリアは鼻で笑ったんだよ。
リアの金の髪に憧れ、美しいと誉めた妹に、『あなたにはその頭がお似合いよ』とバカにしたんだ!」

「髪が……」


わたしは後ろに束ねてあった髪を触る。
なんて酷い姫だ。フェンは20歳前後に見える。その妹ならまだきっと10代。容姿について貶されるのは傷ついただろう。


「妹さんは、今、病気は……」

「ああ? 治んねえよ。原因不明だって前にも言っただろ!? 薬がねぇんだ!」


それを聞いたわたしは、サンドイッチが入った籠をフェンの膝に押しつけると、勢いよく立ち上がった。


「カウル! 剣をだして!」

凄い剣幕で詰め寄ったわたしに、カウルは少しのけぞった。


「剣を? 何に使うんだ?」

「いいから! 出してー!」


興奮するわたしに、「ちょっと落ち着けよ」と困惑しながらも手に赤い光を宿らせる。

体にしまってある道具を引き出すように、ぬうっと剣を取り出すと、周りのみんなが感心しながら軽く拍手をした。
いつ見ても凄い光景だ。

バイクを動かすのも魔力がないと出来ないが、これはさらに高等技術らしく、警備隊の中でもトップクラスの人たちだけのスキルであった。


出し切った剣を「かして!」と奪う。
不意を突かれたカウルは簡単に剣を手放した。


「あ。バカ。ゆづか危ないからーーーー……」


取り返えされる前に、わたしは1つに縛っていたゴム紐の上あたりで、ジャキンと髪を切り払った。
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