処刑直前の姫に転生したみたいですが、料理家だったのでスローライフしながら国民の胃袋を掴んでいこうと思います。
ゆづかは、お構いなしに布をくるくると取ってしまうと、かつらを妹にすぽっとはめる。
途端に妹は、髪の毛が生えたように生まれ変わった。肩の上あたりまでの長さとなる。


「まぁ!」

「なんと!」

両親は揃って目を輝かせた。

「わあ、ぴったり! よかった、サイズ合うか心配だったんだ」

「……何これ。え?」


突然生えた金の髪を揺らし、妹は自分の頭に何が起こったのか必死に見ようとした。
母親が慌てて持ってきた手鏡で、自分の姿を確認すると、妹は呆然とした。


「うそ。髪の毛が生えてる……」

「わたしは医者じゃないから治せない。けれど、何か出来ることはないかなって考えたの。外出するときとかに、使ってもらえたらなって」

「なんで……? だって前は……」

以前に受けた仕打ちを思いだしたのか、妹は複雑そうにした。


「以前は、酷いことを言ってしまってごめんなさい。今はね、そんな過去の自分の禊ぎ中なの。
許して貰えるとは思わないんだけど、少しでも役に立ちたくて」

「でも、あの、これ、なんで金の髪……」

「ああ、わたしの髪で作ったの。金なんて目立って嫌かな? でも、なんか珍しくって貴重なんでしょ?
嫌だったら髪ながい人から提供して貰えれば、他のパターンも作れるんだけど。それまでこれで我慢してもらえると嬉しいな……あ、そうだ! 色んな色で、色んな髪型を日替わりで楽しめたらいいよね、わたしまた作るよ」

「我慢だなんて……! とんでもないことです。金の髪は皆の憧れです。国を繁栄させ、民を幸福へ導く女神だけが持てる大切なもの、そんなものをわたしが……」

「そう。喜んで貰えたならよかった」


ゆづかは、ほっとした顔をした。
フェンは言葉を失い、立ち尽くしていた。

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