私を見て、私を愛して
「とりあえず話はあとにして食べようよ。お腹空いたでしょ。」

洋樹はそう言うと、両手を合わせた。

ゆか子もそれにならって両手を合わせた。

「……いただきます。」

洋樹は生姜焼き定食を前に嬉しそうに笑っている。

ゆか子は気を取り直してアジフライ定食と向き合う。

キャベツの上にアジフライが乗った皿が、おぼんの真ん中にドーンと置かれている。

アジフライの横には、ごはんとみそ汁が陣取っている。

揚げたてのアジフライは食欲をそそる匂いをさせているし、ごはんはツヤツヤと輝き、みそ汁には大根やにんじんなどの具がたっぷりと入っている。

その周りには、白菜の漬物、たまご焼き、きんぴらごぼう、かぼちゃの煮物とひじきの煮物が添えられている。

ゆか子は美味しそうな料理を前にして、ゴクリと唾を飲み込んだ。

アジフライを一口かじる。

アジフライに歯を立てると、サクッと心地よい音がした。

外の衣がサクサクで、中のアジの身はふわっと柔らかい。
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