私を見て、私を愛して
『私たちだって可愛い孫と過ごしたいからよ。』

「それって3人じゃダメなの?」

『ダメよ。私とお父さんはね、孫と過ごしたいの。』

どうしても孫だけがいいようだ。

両親はあれこれと友也に与えたがっているが、ゆか子がいるとそれができないからだろう。

ゆか子の両親は友也を溺愛している。

「わかった。洋樹さんが良いって言ってくれて、友也が行きたいって言ったらね。」

ゆか子はパワフルな母に押し切られている自覚があった。

『ええ、もちろんよ。その間、ゆか子は洋樹さんとデートでもしなさい。』

「え?デート?」

母の言葉に驚き、目を見開いた。

『そうよ。たまには親ってことを忘れてふたりで過ごすことも大事よ。』

「お母さんも親ってこと忘れたいって思ったことあるの?」

ゆか子の記憶の中の母はいつも笑顔だった。

毎日毎日家族のために働いていた。

スーパーでパートをして、終わったら家事をして育児をして、そんな毎日に愚痴を言っているところを見たことがなかった。
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