私を見て、私を愛して
だから、母から親を忘れることも大事だと言われたことにひどく驚いた。

『もちろんあるに決まってるでしょ。』

「そうだったんだ……」

『親だって人間なんだから、息抜きが必要よ。』

「そうだね。ありがとう、お母さん。」

そう言って、静かに電話を切った。

あの日の電話を思い出す。

あの日、母のやさしさが心に沁みた。

ゆか子の両親が気を遣って、洋樹と2人の時間を取れるようにしてくれた。

それだけではなく、孫の友也が可愛くて仕方がなく、一緒に過ごしたいという気持ちもあっただろう。

おそらく気遣い半分孫の可愛さ半分といったところだ。

友也もひとりお泊まりにはしゃいでいる。

初めてのひとりお泊まりだが、行き慣れたじぃじとばぁばの家だから大丈夫だろう。

そういうわけで、久々に洋樹とふたりきりのお出かけになった。

ゆか子は少しワクワクしながら、支度を済ませた。
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