私を見て、私を愛して
重くなってしまった空気を一掃するように、京香が笑った。

水滴がついたグラスを持ち、ビールを飲んだ。

「ゆか子はさ、自分が我慢してうまくならそれでいいやって我慢しちゃうところがあるけど、それにも限度があるでしょ。優しいのはいいことだけど、それだと、いつか爆発しちゃうよ。あとあれだ、結婚に囚われすぎてたんじゃない?」

京香の言う通りだと思った。

家事をしっかりして束縛に耐えればいいと思っていた。

相手は同じ会社の先輩で出世頭。付き合い始めたときに結婚の話をしていたから、相手に申し分なかった。

このまま付き合って結婚できるなら、少しぐらい我慢してもいいと思っていた。

「はぁー。私って見る目ないのかな。」

ゆか子はテーブルに頭を突っ伏した。

自分の不甲斐なさに涙が出そうだ。

うーん、と唸りながら、テーブルにぐりぐりと額を擦り付ける。

「そうねぇ、どちらかというと、ゆか子が良い子すぎる気がする。相手のしてほしいこと考えて先回りしちゃうところとか。相手はだんだんしてもらうことが当たり前になって、傲慢になるというか。まあ『ダメ男製造機』ってことかもね。」


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