私を見て、私を愛して
だが、この選択はとんでもない間違いだった。

その人はとんでもないマザコンだったのだ。

会話の節々で母親の話をする男性を前に、ゆか子の気持ちは沈んでしまった。

家族を大切にすることは良いことだが、度がすぎるとうまくやっていく自信はない。

(私、男運悪いのかな。)

ゆか子は男性の前でため息をつきたくなるのを必死に堪えた。

その男性とは当然うまくいかなかった。

他の男性とも会ってみたが、結果は同じようなものだった。

自分の自慢話しかしない人、趣味が合わない人、食べ方が汚い人。

一度苦手意識を持ってしまうと、もうダメだった。

(私にはマッチングアプリは向いてないのかもしれない。次もダメだったら、一旦休憩しよう。)

そう決めて会ったのが洋樹だった。

アプリの人に会うときは毎回少し怖かったため、待ち合わせ場所から少し離れた場所で、相手がどんな人か窺っていた。

遠くから見ても、洋樹は感じ良く見えた。

実際に会って話してみても、洋樹はアプリで知り合って会った人の中で圧倒的に印象が良かった。


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