私を見て、私を愛して
だってゆか子は男運が悪いのだから、こんな素敵な人が自分を選ぶはずがなかったのだ。

ゆか子は洋樹に会うのをやめた。

メッセージで会おうと誘われても、やんわりと断った。

(断ってれば、そのうち飽きるでしょ。)

そんなゆか子の予想と裏腹に、洋樹からのメッセージは続いた。

結局、ゆか子は根負けして会うことになった。

(直接会ってはっきり言おう。もう会わないって。)

次の男と出会うためには早い方がいい。

そう思ったゆか子は、メッセージをもらった次の日の仕事終わりに会うことにした。

約束の日、洋樹は少しだけ時間に遅れてきた。

「っ、すみません。遅くなりました。」

小走りで近づいてきた洋樹は少し息が上がっていた。

「いえ、大丈夫ですよ。」

そう言いながらもゆか子の頭の中は、別のことを考えていた。

(先手必勝。すぐに言って、すぐに帰る。)

決意を固めていたゆか子が口を開くよりも早く、洋樹が口を開いた。


< 22 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop