私を見て、私を愛して
「実はこれを買っていて。」

乱れていた息を整えた洋樹がゆか子に差し出したのは、ベルベットのケースだった。

洋樹がそれを両手でパカっと開いた。

中から出てきたのはダイヤの指輪だった。

それはドラマのプロポーズシーンで登場する婚約指輪のようだった。

「え、えぇ!?なんでですか?えぇっと、待ってください。これってあの……いわゆる……」

「婚約指輪です。」

「えぇ!?なんでですか?」

洋樹に即答されて、ゆか子は思わず後ずさった。

それを見た洋樹が一歩踏み出し、近づいてきた。

「ゆか子さんが避けているようだったので、自分の本気を伝えようと。」

ゆか子には洋樹を避けていた自覚があった。

「洋樹さんおかしいですよ。普通じゃないです。」

「すみません。順番がおかしいのもわかってます。でも俺は本気です。」

洋樹は申し訳なさそうな表情を浮かべたものの、それも一瞬のことだった。


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