私を見て、私を愛して
3
着飾る
日曜日。
灰色の雲が空を覆い、今にも雨が降り出してしまいそうな日だった。
今日は久しぶりに家族で過ごす貴重な日だ。
雨が降りそうだから、外出は難しいだろうが、家の中でゆっくり過ごせばいいだろう。
ゆか子はひとり、自室にある姿見の前に立ち、鏡を睨むように見ていた。
「うーん、これでいいのかな?」
ゆか子は鏡の前でくるりと一回転してみる。
その動きに合わせて花柄のワンピースの裾が揺れて、ふわっと広がった。
ウエスト部分がキュッと締まったワンピースは、ウエストから下が女性らしいなだらかな曲線を緩やかにひろい、デコルテをさりげなく見せることで、ほのかな色気を感じるデザインだ。
品がありつつも華やかでゆか子のお気に入りだった。
友也を産んでからすっかり着ることのなくなったワンピースだったが、着るだけで気分があがった。
ゆか子は家でおしゃれをするようになった経緯を思い出した。
あれは昨日のことだ。