私を見て、私を愛して
友也は夢を見ているのか、むにゃむにゃと口元を動かしている。

ゆか子はふっと微笑むと、蹴り飛ばされたブランケットを友也にそっと掛け直し、音を立てないように注意を払って部屋を出た。

「ふぅ。」

リビングに戻ったゆか子は、ダイニングチェアに腰掛けた。

洋樹は19時に帰宅する予定だった。

連絡があれば携帯が音を立てるはずだが、眠っていてそれに気がつかなかったのだろうかと携帯を手に取ってメッセージを確認して、はぁ、とため息をこぼした。

トーク画面を見ると、【今日は残業?】というゆか子が送った1時間前のメッセージが最後で、既読もついていなかった。

洋樹からの連絡がないことも既読がつかないことも珍しいことではない。

ここ数ヶ月、洋樹は仕事が忙しいようで、一緒に過ごした時間は多くない。

夫の洋樹は、有名な文房具会社に勤めており、営業部で課長を任されている。

名の知れた会社の営業部課長というだけあって収入はいいが、課長という役職ゆえに残業も多い。

(今日も遅いなぁ。)


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