私を見て、私を愛して
ダイニングテーブルの上には、夕食にゆか子が用意した親子丼が置かれている。

ラップをかけた親子丼は、とっくに冷えてしまった。

まだ少しだけ温かい状態でラップをかけたため、親子丼のラップに水滴がついてしまっている。

ラップについた水滴は、大きな雨粒のようだ。

(完全に冷めるまで待つのが面倒だから、少しぐらいいいやって思っちゃった。)

洋樹は水滴を気にするかもしれないが、残業の今日は、会社でコンビニのおにぎりを食べながら仕事をするはずだ。

つまり今日、洋樹が親子丼を食べることはない。

洋樹はその日食べなかったものは、基本的に次の日も食べない。

結局残り物を食べるのはゆか子だ。それなら、気にするほどのことはない。

仕事に家事に育児……

夜になると、一日の疲れがどっと押し寄せてきて、気を抜くと、ついついぼーっとしてしまう。

どこを見ているわけでもなかった目が雑誌を捉えると、ゆか子は思わずため息をこぼした。

その雑誌は以前、友人からもらったものだ。


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