私を見て、私を愛して
音のした方に視線を向けると、洋樹が右手で目を擦りながらリビングに入ってきた。

「洋樹さん、おはよう。」

「ん、おはよー。」

洋樹は目が覚めたばかりで、まだ意識がはっきりしていないようだ。

寝癖がつき、髪がぴょこんと跳ねた頭のままで、ぼーっとしている。

まぶたがくっつきそうになると、何度も何度も目をしぱしぱと瞬かせている。

洋樹は虚ろにどこか一点だけを見つめていたが、だんだんと眠気が覚めてきたようで、ゆっくりと視線を動かし、やがてゆか子を見た。

「ママ、今日って同窓会の日?」

「違うよ。同窓会は先々週。」

ゆか子がおしゃれしていたため、そう聞いたのだろうが、同窓会に行ったのは先々週だ。

洋樹には、同窓会の数週間前から同窓会があることを伝えていた。

だからその日は友也を見てもらうようにお願いしていたのだが、前日になって洋樹は「俺、明日予定があるから。」と言ってきた。

ゆか子は呆れた。

前から何度も頼み、洋樹も了承していたというのにどうしてそうなったのか、と怒りを取り越して呆れてしまった。

おそらくゆか子が同窓会の話をしていたとき、自分には関係ないことだと思って適当に返事をしていたのだろう。
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