私を見て、私を愛して
年を重ねるごとに友也の体力は増えていくが、ゆか子の体力は低下していくという現実に不安が込み上げる。

来年、再来年と友也の遊びについていくことができるのだろうか。

体力に不安を感じつつも、洋樹が使った分の食器を洗おうとキッチンに立つと、ダイニングチェアに腰掛けた洋樹がじっと見つめてきた。

しばらく何かを言いたげな視線を洋樹から感じたが、さっさと食器洗いを済ませたいゆか子は気づかないふりをする。

痺れを切らした洋樹が重い口を開いた。

「あのさママ、どうして何もないのに着替えてるの?」

「何もないけど……別にいいでしょ。」

本来の目的は、洋樹をガッツリ掴んで女として愛してもらうことだ。

そのためには、自宅でも恥じらいを持ち、楽な格好ではなく綺麗な姿でいることで、新婚当初の気持ちを思い出してもらわなければならない。

だが、それをゆか子の口から言うことをためらい、曖昧に言葉を濁すことしかできなかった。

「だったら別にその服着る意味ないよね?」

意味ならある。

洋樹に綺麗な女だと思ってもらいたいのだ。
< 49 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop