私を見て、私を愛して
　◇ ◆ ◇ ◆ ◇

ゆか子は自分へのご褒美に、来月発売の人気ショコラティエが手掛ける限定チョコレートを買おうと思い、テーブルに広げた雑誌をパラパラとめくっていた。

平日は一日中仕事と家事と育児に追われ、休日も一日中家事と育児に追われている。

日々頑張るゆか子には、自分へのご褒美が必要だ。

ゆか子に限らず、主婦にはご褒美が必要だ。

主婦でなくても頑張る自分にご褒美が必要だ。

ゆか子はダイニングチェアに座って、雑誌に載っているチョコレートの写真を食い入るように見つめていた。

（……絶対に美味しいよね、これ。高いんだけど、どうしても食べたい。ご褒美だったら……いいよね？）

ゆか子は普段の自分の頑張りを思い出して、ひとりで納得した。

そしてご褒美のチョコレートを食べる時の自分を妄想してみる。

（うん、やっぱり幸せだ！よし買おう、決定！！これで来月の発売日まで頑張れそう。）

妄想だけで幸せな気持ちになったゆか子は、絶対に購入することに決めた。

ちょうどテーブルの横を通りかかった洋樹が、ゆか子の見ていた雑誌を覗き込んできた。

「え、なにこれ、高っ！！6個しか入ってないのにこんなにするんだ。信じられない。」


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