私を見て、私を愛して
化粧を落としてしまえば、もう綺麗な服でいる理由もない。

ゆか子はワンピースからスウェットに着替えた。

スウェットを着たゆか子は、もう一度鏡を見る。

スッピンにスウェット姿。

いつもと違うのはメガネをかけていないことだけだ。

「コンタクトもいいか。」

そう言うとコンタクトを外し、メガネをかけた。

すっかりいつもの姿に元通りだ。

ゆか子は静かに肩を落とした。

泣いたせいで腫れてしまったまぶたを冷やすように、水道水でバシャバシャと顔を洗い、泣いたことがわからない顔になってから、静かにリビングに戻った。

そっとリビングにつながる扉を開けると、友也は『イータの大冒険』に夢中だった。

ゆか子がリビングからいなくなっていたことにも気づいていないだろう。

ゆか子はほっと胸を撫で下ろした。


昼食には友也のリクエストでオムライスを用意した。

ケチャップライスに薄焼きたまごを乗せたものだ。

黄色いたまごの上に赤いケチャップで『ともや』と名前を描いたものが友也の大好物だ。

友也のオムライスの文字はゆか子が描いたものだが、ゆか子と洋樹のオムライスには友也が描いた謎の生物がいる。
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