私を見て、私を愛して
 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

嫌なことを思い出してしまった。

この記憶が引き金となって、ゆか子は悲しい気持ちに包まれた。

夜は人間を悲しくて寂しい気持ちにする。

ゆか子は、外から見ると順風満帆で幸せな家庭を築いているように見えるだろう。

やんちゃでかわいい息子と、明るい性格で稼ぎのいい夫。

幸せな家族と言えるのだろう。

だが、それは家族という箱の側面にすぎない。箱の中身は幸せだけが詰まっているわけではない。

結婚して5年目。

洋樹は以前より仕事が忙しくなった。

会社でしっかり仕事をこなす夫は、家では何もしなくなった。

遠慮のない言葉が増えた。

すれ違うことも多くなった。

すれ違いが増えれば、当然夜の生活も無くなるわけで……

ゆか子は、友也が生まれてから、幸せと虚しさを感じるようになった。

ーーー友也の母として満たされつつも、女として必要としてほしい


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