私を見て、私を愛して
そのせいでやや棘のある言葉になってしまった。

「そっか、なんかごめん。昨日は家で夕食を食べられなくて…」

ゆか子の言葉の棘が伝わったようだ。

洋樹は少しだけ申し訳なさそうにしながら謝ってきた。

(私が謝ってほしいのは、家で夕食を食べなかったことじゃない。連絡のことよ。)

ゆか子が声に出さず、心の中で反論した。

「あのさ、昨日って何かの日だった?……その、食事が豪華だったからさ、特別な日だったけど俺が忘れちゃったのかなって……」

洋樹は気まずそうにしながら、窺うようにゆか子に問いかけた。

「別に記念日とかじゃなかったよ。ただお給料日だったから、たまには豪華にするのもいいかなと思っただけ。」

ゆか子の言葉に洋樹は驚いたような顔をした。

しかしそれも一瞬のことで、すぐに照れたように笑った。

「ママ、ありがとう。また仕事頑張る。」

ゆか子は、久しぶりに洋樹の無邪気な笑顔を見た。
ゆか子はこの笑顔が本当に好きだった。

子どものように無邪気だと思っていたその笑顔は、友也の笑顔とそっくりで、ゆか子の冷えた心を少しだけ温めてくれた。
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