私を見て、私を愛して
この人の多さは危険だ。

「ともくん、迷子になるから手をつなごう。」

友也はゆか子が差し出した手を見たが、ぷいっと顔を背けた。

頬がぷくっと膨らんでいる。

それはまるで不貞腐れているようだった。

「やだ。だいじょうぶ。」

友也は顔を背けたっきり、こっちを見てくれない。

いつもなら素直に手をつないでくれるのに、今日はつなぎたくないみたいだ。

ショッピングモールは友也と同い年ぐらいの子どもがいて、手をつなぐのが恥ずかしいのかもしれない。

だが、迷子になる危険があるため、ゆか子には手をつながないという選択肢はない。

「ともくん、ママ手をつないで欲しいな。ママが迷子になっちゃいそう。ママのこと助けてくれないかな?」

ゆか子はその場にしゃがみ込んで友也と目線を合わせ、できるだけ優しく穏やかな声になるように意識した。

友也が迷子にならないために手をつなぐのではなく、ゆか子が迷子にならないように友也に助けてもらう作戦だ。

ゆか子がじっと見つめると、友也もじっと見つめ返してくる。
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