私を見て、私を愛して
「あぁ、この辺りに会社の取引先があるんだよ。俺の担当じゃないんだけど、担当者が体調不良で入院して仕事を代わったことがあって、そのときに1回だけ来たんだ。」

「そうなんだ。」

ゆか子は洋樹が言っていた、1回だけ来たことがある、という言葉の意味を理解した。

「でもどうして今日はここに来たの?」

ゆか子はもう一つ気になっていたことを聞いた。

「それはママが定食ものが好きだからでしょ。」

ゆか子は定食ものが好きだ。

定食ものは副菜が豊富なことが多い。

定食ものであれば、一度の食事で色々な料理を楽しむことができる。

そして何より、毎日自分が料理をして、自分が作った料理ばかり食べていると、たまに自分以外の人が作ってくれた料理が食べたくなるのだ。

(でも今日は……)

一番気になっていたことを尋ねようと口を開いたとき、いいタイミングで料理が運ばれてきた。

ゆか子の前にアジフライ定食、洋樹の前には生姜焼き定食が置かれて、美味しそうな匂いが漂う。
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