月下の恋人…missing
『まゆ。今日も光彦君来てるけど。いいの?』
ママの優しい声が闇に響く。
「うん。いいの…。」
私は上手に笑えているのか心配になって、うつ向いた。
『ちょっとママ、下の自販行って来るけど。すぐ帰って来るから。』
―――バタン…
遠ざかる足音と共に静かな空間に耳を澄ます。
「光にぃ…逢いたいよぉ」
小さく呟いた声は誰にも届かない。
私の心にも届かないまま、静寂に飲み込まれて小さく笑った。
どうかあの夏のままで――
そう願いながらゆっくりと顔を上げると、頬を撫でる優しい風に瞳を閉じて光にぃを想う。
(どうして……)
暗闇に問いかけて、儚い記憶を紡いで心のページをめくった。