月下の恋人…missing
言い終わらないうちに、私をお姫様抱っこしたまま光にぃは走り出した。
゛待ちなさい!まゆ!光彦君っ!゛
ヒステリックに叫ぶママの声がどんどん遠ざかって行く。
どうして―――…
力強い腕の中で、逆らう事が出来なくて呆然と見上げたまま
真剣な光にぃに見とれた。
どうして来たの?
逢いたくなかったのに
雨の日デートで最後にしたかったのに。
だって――――
逢ってしまったら、簡単に決心が揺らいでしまう事は解っていたから。
『ちょっと休憩…ハァ』
しばらく走って人気のない廊下で、光にぃは足を止めた。