月下の恋人…missing



「えっ…!ちょっ」




ストンと降ろされて戸惑っている間に、無言のまま壁と光にぃの間に挟まれる。






『俺を見て』





光にぃの前髪が私のひたいにかかるくらいの近すぎる距離と




勝手な行動をとっていた罪悪感で、目をあわせられなくてうつ向いたけど




壁についた光にぃの両手に挟まれて、気まずさから逃げさせてくれなかった。






『まゆ。ちゃんと俺を見て』






切ない呟きに、勇気を出して見上げると、真っ直ぐな視線とぶつかる。





『あの時、全部聞いた?』



「あの時って」



『まゆ。』





真剣な瞳に嘘はつけなくて



だけど認めてしまうと、ただ頼るだけの弱い女になってしまうようで、素直にうなずく事が出来なかった。





『それで自分が消えればいいって考えた?』






< 212 / 247 >

この作品をシェア

pagetop