月下の恋人…missing
第1章 七夜月
開演
真っ暗なステージ
スポットライトに照らされたその人は、端正な顔を真っ直ぐに上げて
『おいで――…』
ニコッと笑って両手を広げた。
「キャ――ッ!」
「ミィ様―――!」
広い会場は大音響に負けない程の黄色い歓声に包まれる。
(最悪……。)
甘い歌声が流れる中、来てしまった事に今更遅い後悔を感じながら、静かにうつ向いた。
―――――
「ごめんなさいっ!」
高3の1学期。期末テストも間近に迫ったある日。
親友の美姫に借りたノートを返す傍ら、学校近くのマックに立ち寄った時に事件は起こった。
『ない?!』
美姫はアイスコーヒーのストローを口に加えたまま
サラサラとした肩までのストレートを掻き上げて、不思議そうに私を見つめている。