月下の恋人…missing
「ごめんね――…」
『代わりに――』
私が謝るのを遮る様に美姫はニッコリと笑って続けた。
『代わりに一緒に行って欲しい所があるんだよね。』
「一緒に――?」
『そう一緒に。』
そして、私は今こうして、橘 光彦のコンサートへ来ている。
橘 光彦 22歳 知らない人はいない位の国民的スター
長めの前髪の間からのぞく切れ長の瞳と
無邪気な笑顔がファンのお姉様方にとっては、たまらないらしい。
隣を見ると、半狂乱で目がハートの美姫が視界に飛び込んで来る。
『まゆ、初参加で超ラッキーだよ。すぐそこにミィ様が居るっ!カッコイイっ!』
あはは……
美姫が興奮する様子を見て余計に項垂れた。