この政略結婚に、甘い蜜を〜溶けるような夜を共に〜
「華恋!!」

華恋は強く零に抱き締められる。その震える両腕で抱き締められた瞬間、零が助けに来てくれたのだと理解し、華恋の体は再び震え、涙が自然と溢れて流れていく。

「立ちなさい。暴れるな!」

しばらく零は無言で華恋を抱き締めていたものの、すぐ近くで逃げようともがく男性二人を睨み付け、口を開く。

『僕の妻に手を出そうとしたこと、一生後悔させてやる!!』

早口で紡がれた日本語でない言葉は、何と言っているのか華恋にはわからない。だが、男性二人は抵抗を止め、ガタガタと震え始めた。もう安心していいのだと、華恋は両手を零の背中に回す。

「奥さん、大丈夫ですか?」

ハンカチを口から出し、警察官の質問に華恋は「はい」と言い頷く。そして、気になったことを零に訊ねた。

「どうして、ここが……?」

零は腕の震えは収まっていたものの、今にも泣き出してしまいそうな顔をしている。一度離れた体は、また零によって強く抱き寄せられた。
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