この政略結婚に、甘い蜜を〜溶けるような夜を共に〜
「……本当は、華恋の全てを僕が奪いたいとずっと思ってて、あの時もあのまま華恋を押し倒してしまおうって考えてた。だけど、その瞬間に華恋を怖がらせてしまうって思ったんだ。兄さんとの浮気を疑った時のこと、思い出して……。華恋を、傷付けたくなくて……」

華恋に温かい雨が降り注ぐ。あれだけ重かった空気が嘘のように、華恋の心は軽くなっている。零はずっと、華恋のことを想っていてくれたのだ。

龍羽との浮気を疑われた時、華恋は零に無理矢理押し倒され、そのまま一線を越えるところだった。あの時、華恋は心の底から恐怖を感じて零を拒んだ。その時のことを、零はずっと考えていたのだろう。

華恋の胸がトクトクと音を立てる。頬が赤く染まり、愛されている幸せでいっぱいになる。だが、人は貪欲な生き物で、もっと満たされたいと思ってしまうのだ。

華恋は零の方を向き、零の手を取ってキスをする。本当は口にしたいのだが、身長差があり、届かないのだ。それが少しもどかしい。
< 15 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop