この政略結婚に、甘い蜜を〜溶けるような夜を共に〜
体を重ねていないということを華恋が考えたのは、これが初めてではない。エミリーから妊娠をしたことを告げられた時から、考えるようになっていた。

(零さんは、どうして私に触れてくれないの?)

キスは毎日のようにしている。手を繋ぐことも、抱き締め合うことも、当たり前のようにしている。寝室も同じで、いつも同じベッドで眠っている。だが、零が華恋に触れてくることは一切ない。そのことに華恋はモヤモヤした気持ちを抱えている。

(私に魅力がないから?子どもがほしくないから?)

華恋の胸が騒つく中、零は隣で「赤ちゃんって可愛いな」と微笑んでいた。



龍羽とエミリーの双子の赤ちゃんが生まれてから一ヶ月後、華恋は零と共に広大なビーチや珊瑚礁が広がる沖縄へとやって来た。零に「旅行に行こう」と誘われたためである。

「ん〜、やっと着いたね」

空港を出て、体をグッと零は伸ばす。朝一番の飛行機に乗ったものの、たくさんの家族連れやカップルがおり、飛行機の中は賑わっていた。
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