この政略結婚に、甘い蜜を〜溶けるような夜を共に〜

華恋が振り返ると、そこには個性的なデザインのTシャツとジーンズを履いた二人組の男性がいた。男性たちは何かを話しかけてくるものの、何を言っているのかわからない。英語ではないことは確かだ。

（顔立ちからして、韓国か中国の方かしら？だけど、何を話しているのかが全くわからない……）

華恋は戸惑いながらも、英語で「何か御用ですか？」と話しかけてみる。だが、二人は英語がわからないようで、首を一瞬傾げてお互いを見つめ合った後、また華恋に話しかけてくる。

困り果てた華恋だったが、スマホに入れてある翻訳アプリの存在を思い出し、かばんからスマホを取り出そうとする。だが、その手は男性の一人に掴まれてしまった。

「えっ！？」

驚く華恋だったが、もう片方の手も掴まれてしまい、そのまま男性二人に手を引っ張られ、列から離れていく。

「誰か、助けてください！誰か！」

恐怖が募り、華恋は震える声で叫ぶ。だが、道行く人たちは華恋のことなど見えていないかのように笑っている。まるで、透明人間になってしまったように感じた。