お嬢様は完璧執事と恋したい

4話


 都心から高速道路に乗り、三時間ほど走って辿り着いた場所は、見たことがない山の中だった。高速を降りてすぐに『やけに暗い』と思ったが、さらに街灯の少ない山道の先にあったのは、掘っ立て小屋のような古い廃屋だった。

 両足を拘束する紐を解かれて古い建物に押し込まれると、冷たくカビくさい床の上に再度身体を転がされた。

「う、ぐっ……!」
「へえ、これが邑井建設の社長令嬢か」

 小屋の中にはもう一人の彼らの仲間が待ち構えていた。四十歳前後と思わしき見た目や二人に顎で命令する横柄な態度から、仲間ではなく上下関係かもしれないと予想する。

「写真より可愛い顔してるじゃねえか」

 床の上に転がった澪の顔にランタンを近付け、男が前歯を見せて下品な笑みを零す。その気色悪い笑顔に全身の産毛がぶわりと逆立ったので、顔を背けて視界に入らないようにした。

 澪の様子を見てフンと鼻白んだリーダーの男も、やはり澪自身には何の興味もないらしい。その場にヨイショと立ち上がると、ここまで澪を連れて来た大男に命令を出す。

「邑井社長に電話しろ」
「はい」
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