お嬢様は完璧執事と恋したい
朝人が手袋を外しているのは、先ほど温泉から上がった澪の髪にドライヤーをかけ、櫛で綺麗に梳いてくれたからだ。子供じゃないのだから本当は自分の身支度は自分で出来るし、どうしても必要なときはメイドの沢城に頼んでいる。
けれど朝人に直に触れてほしかった澪は、わかりきった嘘をついた。自分じゃ出来ない、と甘えてダダをこねたので、彼は汚れているかもしれない白い手袋を外して澪の髪を整えてくれたのだ。
そして今度は布団に入ったまま隣に座る朝人の細長く男性らしい左手を右手でぎゅっと掴む。そうしているとそのうちもっと触れたくなって、朝人に断りも入れずゆっくりと結んでいく。彼の指と指の間に自分の指を絡め、少し強く握り込むように力を入れる。
「えへへ、恋人つなぎしちゃった」
傍に座る朝人の顔を下から覗き込み、無邪気さを押し出して微笑む。あまり大きい要求をして振りほどかれてしまったら悲しい。だからあくまで異性としてではなく、執事に対するお嬢様のわがままとして許されるほどの戯れ。