お嬢様は完璧執事と恋したい

　わかっている。成人はしたが、澪はまだ子どもだ。自分で働いてお金を稼いでいるわけじゃない。大人の魅力が溢れる朝人に女性として意識してもらうには幼すぎる。

「でも私が大学を卒業するまでに、朝人さんに恋人が出来ちゃうかもしれない……そしたら私、どうしたらいいかなぁ」

　澪が自立するまでの間に、朝人に恋人が出来る可能性も十分あるだろう。不愛想で無表情ではあるが、これだけ整った見た目で仕事もできるし、澪のようなわがままな女性の扱いも上手なのだ。

「もし恋人とのデート中に私が誘拐されたら、朝人さんはどうする？　やっぱり恋人優先よね？」

　澪には朝人の恋愛を阻む権利はない。プライベートをどう過ごすかは彼の自由だ。

　けれどもしそのプライベートと、今回のような事件が重なったらどうするのだろう。今日は澪を迎えに来てくれたが、休暇で恋人と会っているときに同じことが起こった場合も朝人が助けてくれるとは限らない。そう考えるとしゅんとしてしまうけれど。

「もちろん、お嬢様を優先しますよ」

　即答だった。朝人が迷うことなく言い切ったので、澪はそっと安堵する。

「ほんと？　うれしい……」

　朝人の言葉が嬉しくて、つい本音が零れる。