お嬢様は完璧執事と恋したい
6話
マンションの四十六階にある応接室に呼び出された澪は、父と向かい合う男性の姿を認めると、思わずと驚きの声を上げてしまった。
父は今日も澪の心情にはお構いなしだ。強引に縁談を進められそうになったことが原因で家を飛び出し、その結果いつもなら警戒しているはずの不審者に連れ去られるという事件に発展したのに――まさかそのとき話していた相手を家に招き、強引に会わせようとするなんて。
「あの、神野さん」
仕事の電話がかかってきた、と父が席を外したタイミングで、澪は向かいに座る男性にそっと声をかけた。澪と神野の両方をこの場に呼び出しておきながらあっさりといなくなってしまった父に代わり、休日にわざわざ足を運んできてくれた神野へ労うために。
「どうですか、澪さん。お父様の考えに従い、僕と結婚するのは」
「えっ……?」
ところが彼は澪の次の言葉を待つことなく、自分の主張を食い気味にねじ込んできた。