お嬢様は完璧執事と恋したい

「旦那様には話を通してありますが、私はもうすぐ、こちらでの勤務を終了させて頂くことになります」
「へ……?」

 朝人がさらりと告げた言葉に目を見開いて固まってしまう。一瞬何を言われたのか理解が出来ず、朝人の顔を唖然と見つめてしまう。

「え……朝人さん、執事のお仕事辞めちゃうの?」
「そうなりますね」

 聞き間違いだと思ったのに、間違いではなかった。朝人は確認の言葉をあっさりと肯定して、澪をさらなるどん底に突き落とす。ただでさえ相手にされていないというのに、そのうえ澪の目の前からいなくなってしまうなんて。

「嘘……! だめ、そんなのだめ!」

 朝人に女性として意識してもらうために上品で落ち着いた女性になりたいと決意したばかりなのに、また子どもじみた言い方をしてしまう。だが今の澪には、自分の振る舞いを気にする余裕さえない。

「まあまあ、澪さん、落ち着いて。彼の話を最後まで聞いてあげて下さい」

 泣きそうな気持ちを神野に慰められ、ぐっと押し黙った澪の様子を見て、朝人が静かに口を開いた。

「私が所属する人材派遣会社ですが、このたび社長が現役を退くことになりました。それに伴って、他の人員配置もまとめて見直されることになったんです」
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