お嬢様は完璧執事と恋したい
7話
澪の就寝支度を終えた沢城が自分の部屋へ戻っていったので、澪はひとりになったリビングルームの照明を落とし、薄暗い室内から星空を眺めていた。
四十七階といえど都会の夜は明るいもので、星の煌めきはいつもぼんやりと霞んでいる。それでも澪は星空を眺めるのが好きだった。宿題で出されたオリオン座の観測や北斗七星の場所から北極星を探す方法、宙には八十八の星座が存在することを教えてくれたのも、大好きな執事の朝人だった。
「お嬢様」
「ふぁっ……!? び、びっくりした……!」
朝人のことを考えていると、突然視界に本人が入り込んできた。部屋が暗かったこともあって必要以上に驚いた澪は、あやうく悲鳴を上げそうになった。だがすぐに相手が朝人だと気づき、どうにか絶叫しないよう堪える。
「申し訳ありません。一応声はかけたんですが……天体観測ですか?」
「う、うん……」
朝人が謝罪してくるので、うるさい心音を宥めて頷く。表情を緩めた彼は、澪の隣に視線をやって『座っていいですか?』と尋ねてきた。掃除が行き届いているのでフローリングに直に座っても問題はないが、いつもならソファや椅子に座ってくださいと言われるところだ。