お嬢様は完璧執事と恋したい
澪の心音が乱れると、朝人が至近距離でフッと微笑んだ。次の瞬間、頬を撫でていたはずの指先が澪の顎をくいっと持ち上げる。
唇の周辺にゆっくりと舌が這うような優しいキスだったのに、突然火がついたように口の中を蹂躙される。深い場所まで舌を挿しこまれ、澪の全てを味わうように舌を絡ませられる。
「んん、ぁ……っ、っふ」
呼吸さえ奪うような激しいキスに、身体から力が抜けてしまう。朝人のスーツを掴んでいた指先も脱力し、何も考えられなくなる。
貪るようなキスが何分続いていたのかはわからない。何度も繰り返される口づけに全身が痺れて目尻に涙が滲んだ頃、朝人はようやく澪を解放してくれた。
ぷあ、と息を吐くと、今度はすぐに大きく吸い込む。キスの経験がない澪は、触れる以上の口付けにどう反応していいのか……どう息継ぎをしていいのかもわからない。くたりと力が抜けてしまった澪を見て、朝人がくっくっと笑う。
「わかりましたか、お嬢様? こうなる可能性もあるのですから、オトナの男性をからかってはいけ――」
「朝人さん……ベッドルーム、すぐそこよ」
「……」
はぁっ、と零れた吐息は自分でもわかるほどに熱い。それでも嫌だとは全く思わず、むしろ何度でもして欲しい、これ以上のことも朝人に教えて欲しいと思う。可能ならば今すぐにでもいいと思うほどに。
「はぁ……貴方にはかないませんね」
朝人が呆れたようにため息を吐く。