へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜




「この子が噂の新人ちゃんか〜」




 睨みつけてくる団長とは真逆の穏やかな声の主の男が、壁際から歩み寄ってくると遠慮なしにミアの顔を覗いて来た。


 ち、近いっ……!団長に気を取られすぎて、全然気づかなかった……!


 アッシュゴールドの髪から清涼感溢れる花の香りを漂わせながら、人懐っこそうな猫目で見つめられ、ミアの心臓が不思議と跳ねる。

 慣れない異性との距離の近さに狼狽えそうになるのを堪えて、遅れを取り戻すように挨拶に取り掛かる。



「ほっ、本日より魔獣騎士団第四部隊に所属されることになりました!召喚士のミア・スカーレットです!」



 よろしくお願いしますと頭を下げて、これからの抱負を伝えようと口を開こうとするが、少し乱暴に席を立った団長により反射的に唇を結んだ。



「ようこそ、“召喚士様”。俺は魔獣騎士団の団長兼第四部隊を取り纏める、リヒト・アンバネルだ。配属初日ですまないが、まず初めに忠告だ」



 少し苛立った凛とした声に、自然と背筋が伸びるのを感じたミアは震えそうになる身体に鞭を打つ。


 ここで怖気付いちゃダメだ。ようやく掴んだ就職先を手放すわけにはいかないんだからっ!


 ミアを睨みつけながら前に立ち塞がる団長リヒトに負けじと、全身に力を入れて続く言葉を待つ。



「俺達が扱う魔獣は、そこらの生易しい生き物とは違う。易々と腕を咬みちぎり、背中を引き裂き、最悪まるごと喰らう……それが魔獣だ。生半端な気持ちでこの場に立っているなら――とっとと失せろ」






< 10 / 202 >

この作品をシェア

pagetop