へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
ミアは労いの言葉を掛けながら昼食を手渡すと、騎士達は感謝の言葉を述べながら、彼女から昼食を受け取っていく。
しかしいつもの活気は見られず、少し暗い食堂に女将と顔を見合わせた。
……何があったんだろう。
初めて感じる重たい空気に、詳しい事情を聞きたくなるのをぐっと堪えた。
彼らは今、休憩中だ。疲れて帰ってきているというのに、あれこれ聞いたら疲労が積み重なるだけだと、ミアは食堂を後にする。
何か出来ることはないかと考え、思いついた騎士達の馬の世話をしようと外に出ようとすると、丁度中に入ってきたリヒトとぶつかりそうになる。
「ご、ごめんなさい……!」
咄嗟に身を引いて道を開けようとするが、突然手を掴まれた。
「お前を探しに来た所だ。着いて来い」
返事をする暇もなく、手を引かれるまま外に出ると、リヒトが乗っていた黒い馬が大人しく騎士舎の前で待っていた。
頭を下げる馬は彼に懐いているのだと関心していると、ふわりとミアの身体は軽くなり宙に浮いた。
「わっ!」
動揺するミアを他所に、リヒトはミアを抱き上げそのまま馬の背へと座らせた。
そのまま横向きに座ったミアの腰を片腕で抱き、もう一方の手で手綱を掴んで馬を走らせる。