へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜




 突如近くなった距離感に、心構えも何もしていなかったミアの心臓は、うるさい程に全身に心音を響かせる。悠々と駆ける馬の背に揺られる彼女の身体は、いつになく熱い。



「団、団長……!あの、一体っ……!」



 何故かドキドキする気持ちと慣れない馬の揺れに言葉を詰まらせていると、耳元で囁かれる力強い声にミアの身体が不思議と震えた。



「舌を噛みたくなかったら黙ってろ」


「……っ!」


「これから全部隊の隊長及び、各隊の召喚士長と共に円卓会議を行う。厄介な事にお前も参加対象だ。くれぐれも口を慎むように……いいな?」



 静かに黙って頷くと、抱きしめられる力がほんの僅かに優しくなる。リヒトの手から伝わってくる熱に、不思議と心が落ち着いていく。風を感じながら、少し乱れた呼吸を整えた。

 見慣れない景色はより一層華やかしさを増していくのに気づき、見えてきた王宮に息を飲む。


 まさかとは思うけど……向かってる場所って、もしかして……?


 馬を走らせる方向は、明らかに王宮目掛けて一直線だ。迷うことなくリヒトは道を選び、そのまま風を切って進んでいく。

 ヘマだけはしないと自分に言い聞かせ続けていると、気づけば王宮へと辿り着いていた。

 一般庶民であるミアが訪れることはまずない王宮を前に、自然と口が開いてしまう。






< 106 / 202 >

この作品をシェア

pagetop