へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
本題が一向に進まず、不満ばかりが飛び交う部屋の中で、何かにじっと堪えるリヒトはミアの知らない表情を浮かべていた。
様子がおかしいリヒトに声を掛けようとしたその時、遮るように扉が開いた。
「何やら騒がしいようですが、如何なさいました?」
純白の豪華な貴族衣装に身を包んだ細目の男性が、会議に参加する者達を見渡して、わざとらしく微笑んだ。止める者は誰もおらず、中へと入ってくる男性に目を伏せる。
「魔獣騎士団長たる貴方が、部下達に対し言いたい放題にするとは、どうかされたのですか?」
「グレモート卿……どうして此処へ?」
「国の状況を把握するのは、私の務めですから。まあ……殿下からの通達を頂いたからというのが、本当の所ですがね」
冷静さを保とうとするリヒトの顔が僅かながらに歪むのを、ミアは見逃さなかった。それどころかリヒトを前にして、堂々たる態度を取る男――グレモート卿に、ミアは不信感を覚える。
なんか……嫌な人。
疑いを向けてくるような視線。ねっとりと纒わり付くような声。どこか嘲笑うような口元。
見た目だけで人を判断してはいけないと分かってはいても、彼から与えられる印象は近寄り難いものばかり。
ミアの不信感を抱いた目に気づいたのか、グレモート卿は彼女に身体を向けた。