へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜



 ズキズキと痛む腰を摩りながら、失敗した魔法陣の跡を見つめる。



「魔法陣には異常なし。ってことは、やっぱり私の魔力の問題ね……」



 顎に手を添えながら自己分析を進めるものの、失敗した事実には落胆してしまう。

 だが魔獣達の食べ終わった合図の鳴き声に、溜息が漏れそうなるのを忘れて、綺麗に食べ終わった餌皿を回収する。美味しかったと尻尾を振るその愛くるしい姿に、自然と笑顔が零れた。


 例え失敗したとしても、この子達は笑わない。私の傍に居てくれる。


 温かい気持ちに包まれ、普段よりも念入りに口周りを拭いてやり、日課のフワフワブラッシングをしていれば、騎士達がぞろぞろとやって来た。

 今日も今日とて訓練に勤しむ彼らの距離感は、少し前には想像も出来なかった程に縮んだ。相棒の騎士の姿を見つければ、嬉しそうに喉を鳴らす。

 ミアに行ってきますの挨拶をするように、頬を擦り付けて檻の外へと出ていく姿は、いつ見ても頼もしい。



「今日も元気に頑張ってきてね〜!」



 彼らの後ろ姿を見送り、気合いを入れて檻の中の掃除に取り掛かる。頑張る彼らを見て、落ち込んでいる暇はないのだと、前向きな気持ちがミアの背中を押した。

 仕事中も頭の中は、召喚術の反復練習。反復といっても、まだまともに魔獣の召喚ですら成功していないミアには感覚的なものは一切分からない。






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