へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
だが実際問題、頑張る糧があったとてすぐに成功は実らない。
「ゲホッゲホッ……!」
目に染みる煙に咳き込みながら、流れていく煙に眉間にしわを寄せた。
新しい朝がやって来て、気合十分なミアに襲いかかってくる忌々しい煙は何度見ても嫌気がさす。幸い、昨日の失敗から得た教訓として外で訓練をしていたお陰で、多くの煙を吸わずに済んだ。
新鮮な空気を肺に送り込めたところで咳が落ち着き、大きな溜め息を零した。
「せめて煙だけでも、綺麗で可愛いものが召喚できたら嬉しいんだけどなあ」
『煙のみを召喚するバカが何処にいる』
独りごちるミアに鋭い指摘が入る。声のする方を振り返れば、綺麗な真っ白な毛並みを靡かせながら、落ち着いた足取りでやって来るフェンリルは明らかに機嫌が悪そうだ。
「フェンリル、おはよう。起こしちゃった?」
『誰かさんの煙のせいでな』
「えっと、それは……ごめん」
苦笑いを浮かべることしか出来ないミアは、失敗した魔法陣を隠すようにその場に座り込んだ。
『まったく……力み過ぎだ。何をどうしたらそうなる?』
「それが分かってたら苦労しないんだけど……」
そうボヤくと呆れ顔を浮かべたフェンリルに、俯くしかない。
憧れていた召喚士になったというのに、思い描いていた理想と現実がかけ離れていて、今すぐにでも自己否定に走りそうになる。