へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
そんな感情が渦を巻かけていたが、フワリと優しい温もりと気持ちのいい毛並みがミアに触れた。
俯いていた顔を上げれば、遠くを見つめるフェンリルが傍に寄り添っていた。
『何故、あいつ達が閉ざしていた心を騎士達に開いたか分かるか』
「え……?」
突然の問いにフェンリルに釘付けになっていると、心地のいい風が二人の間を流れた。
静かに時間が過ぎていき、眩しい朝日が街を照らし始める。
その輝きに反射するフェンリルの毛並みが、眩しくて思わず目を細めた。
『答えはあんただ。ミア』
「わた、し……?」
『あんたが褒めてくれるから、あんたの喜ぶ顔が見たいから――あんたに認められたいから、あいつらは我武者羅に頑張ってるんだ』
言葉を紡ぐフェンリルは遠くを見つめていた視線を、ミアへと移すと今までに見たこともない優しい表情で彼女を見つめた。
寄り添うフェンリルの熱が直に伝わり、まるで抱き寄せられているような感覚にミアの心は溶かされていく。
『ここ数日の間で何があったのかオレは知らない。ただ、あんたが一生懸命になっている姿をオレらは知っている。凍えたオレらに温もりを与えてくれたのは間違いなくミア、あんただ。そんなあんたの、落ち込んでいる姿を見たいとは思わない。だから何かあれば手伝う。一人で抱え込もうとするな。オレ達は――家族、だろ』
「フェンリル……」
真っ直ぐ見つめてくるミアに、急に目を逸らしたフェンリルは荒く鼻を鳴らした。