へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
助けられたと思いたいのに、彼女からは伝わってくる威圧感からそうは思えなかった。
団長よりも怖いっ……!
指を軽やかに鳴らすと魔法陣は瞬く間に消え、顔を出していたグラトニーサーペントは崩れ落ちるように姿を消した。魔法陣に突き刺さっていた弓矢だけが、地面に静かに影を落とす。
緊張が走り、謝罪と事情を説明しようと口を開くが、副団長は一気に距離を詰めてくる。それどころか上から下までじっくりと見つめられたかと思えば、彼女の眉間にしわが寄る。
それすらも気高く品があるように見えるのは、やはり彼女が持つ魅力のせいなのだろう。
「はあ……」
重たい溜め息と鋭い視線。向けられた感情が諸に分かり、思わずゴクリと唾を飲み込む。本能が危険を察知して、身構えてしまう。
「あっ、あの……!」
何か言わなければと声を振り絞るが、か細い声はすぐさま掻き消される。
副団長に声を掛けにやって来たリヒトが、彼女の名前を呼ぶ。
「エルザ!どうかしたのか?」
「いいえ。ただ……この子に挨拶しようと思って」
「え……?」
説教をされる空気そのものだったというのに、挨拶という偽りを吐き出したエルザと呼ばれた副団長に困惑する。
笑顔も作らずにエルザは、ミアを真っ直ぐに見据えて、余計な事を言うなと圧力を掛けてくるのが分かる。