へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
彼女の後ろ姿を唖然としたまま、眺めていることしか出来ないミアに、フェンリルが声を低くして唸る。
『本当にいけ好かない奴だ』
「……」
『確かに先程の召喚には問題があった。昨日の今日で疲労が残っているのかもしれない。オレの配慮不足だった。一度獣舎に戻って――』
「あーもう!悔しい!!」
突然声を荒らげたミアに驚いたフェンリルは、身を守るように思わず姿勢を低くする。
拳をキツく握りしめたミアは、胸の内に溜まりに溜まっていた溜め息を全て吐き出すように重たい溜め息を零した。
「本当に情けない!召喚出来るようになったことくらいで浮かれて、対処出来ないことに動揺して……!何が団長の役に立ちたいよ!こんなんじゃ、また足引っ張るだけじゃない!!」
いつもと様子が明らかに違う、己に叱責するミアをフェンリルは、ただ黙って見つめた。
『……慰めはどうやら要らないな』
フェンリルの呟きすら耳に入らないミアは、両手で強く頬を叩いた。
パチンという音が響き渡ると、気持ちを入れ替えた彼女の瞳には、眩い光が宿る。
胸を張って私は召喚士だって言えるようにならなきゃ。時間もないんだし、今は皆の役に立つ方法を掴まなきゃ……!
一度深く呼吸を整えた後、ミアはフェンリルに向き直る。
「フェンリル、もう一度……もう一度やってみる。沢山扱いて!!」
やる気に満ち溢れたミアにフェンリルは小さく笑い、唸るようにしながら徹底的に彼女の指導に当たる。
そんな姿を遠くから見つめる目があることには、気合いに満ちたミアは気づくこともなかった。