へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜



 フェンリルが声を掛けるのも納得がいく。

 気合いを入れすぎたと、彼の檻の前に座り込むと心地よい風がミアの髪を撫でる。



「ふぅ……」



 集中力を使いすぎたミアには、気持ちのいい風は眠気を誘う。

 仕事はまだ残っている、寝てはいけないと頭では分かっているというのに、身体は言うことを聞こうとはしない。

 重たい瞼はあっという間に閉じていき、規則正しい寝息を立ててミアはそのまま眠りの海に沈んでいく。

 カクンと傾き始めたミアに、フェンリルは鼻を鳴らしながら自分の檻の外で眠る彼女の隣でゆっくりと伏せた。自分では支えきれなくなった体を、フェンリルの首元に預けると、幸せに包まれたのか眠ったまま微笑んだ。



『手のかかる奴だ』



 そう言うフェンリルは満更でもない顔をミアに向けて、微かに尻尾を左右に振る。

 母親に抱き締められるような安心感と、心地よい体温がミアを包み込み、眠りの海に深く沈んだ彼女はもう少しその優しさに触れていたくて、更に深く潜り込む。








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