へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
微睡む目を擦りながら、入り込んでくる茜色の光に慌てて起き上がる。
まだ終わっていない仕事があるというのにと、魔獣達が帰ってきたかを確認しようとするものの、見慣れた空間に目を丸くした。
「あれ……ここ、私の部屋?」
寝る前の最後の記憶と言えば、獣舎のフェンリルの檻の前だ。ここまで歩いて来たとなれば、しっかりと記憶が残っているはず。
だが、そんな記憶は一切持ち合わせていない。
ベッドから起き上がると、パサリと何かが滑り落ちて床に落ちる。
「……?」
落ちた何かを拾い上げて、目の前で広げて見れば見覚えのある複数の勲章とバッチが着けられた制服の上着だった。
誰の物だと考えなくとも、すぐにそれがリヒトのものであることが分かる。
……団長が、ここまで運んでくれたのかな。
どんな顔をしてここまで運んだのか、想像しただけで顔が赤くなるが、一度だけ短く大事に上着を抱き締めて立ち上がる。鏡の前でおかしな所はないかを確認し、世話役としてのやるべき仕事が残っていると、急いで部屋から出た。
寝たお陰で溜まっていた疲労感は無くなり、身体が軽い。訓練場にまだ残っている魔獣達の様子も少し見に行こうと、獣舎に向かう途中で進路方向をズラす。
茜色に染まっていく訓練場に近づくにつれ、聞き慣れない歓声が聞こえてくる。