へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜





 首を傾げながら、駆け足で訓練場へと辿り着くと、そこで見た光景に驚きの声を思わず零す。



「フェンッ、リル?!?!」



 自慢の真っ白な毛を風に流しながら、目にも止まらぬ速さで走るフェンリルがいた。訓練場の壁を力強く蹴り高く飛ぶと、訓練場の中心で木剣を握るリヒト目掛けて飛びかかる。

 状況に着いて行けず、狼狽えながらも止めに入ろうと動くがミアの足の速さでは到底追いつかない。

 考えたくもない未来を想像したのもつかの間、軽やかにリヒトは着地したフェンリルの彼の背に跨った。

 そして、息を合わせるようにして周囲から攻撃を仕掛けてくる騎士達を次々と薙ぎ払い、最後の一人が地面に片膝ついた所でリヒトは息を吐いた。



「お前らもう少し真面目にやれ」


「そっそんな事言ったって……団長、もう俺ら体力の限界が……」


「はあ……はあっ……はあ……!無理無理、無理っす!!」


「本番はこうも甘くないぞ。どんな魔物が現れるか分からないんだからな。素振り百回終わった奴から休憩だ」



「「おっ……鬼だぁあ……!」」



 団長命令となれば逆らうことが出来ない騎士達は泣く泣く、限界を迎えた身体を起き上がらせ、木剣を嫌々握りしめて素振りを行い始めた。






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